■ズロースの普 及
1932年(昭和7年)12月16日に日本橋にあった白木屋百貨店(現在:東急日本橋店)の4階から出火した火事は、日本初の高層建築火災として記録されている。
この火事で死者14人、重傷者を21人も出すことになってしまうが、この事件以降、変わったことが1つある。
この火事で無くなった人の多くが女性だったのだが、当時の女性はまだ着物が多く、基本的にノーパンだった。その為に、白木屋の階下でクッションをひいて飛び降りられるようにしてあったにも関わらず、恥ずかしがって飛び降りることが出来ず、そのまま煙にまかれてしまった。
このことから、政府が女性にズロース(下着)の着用を呼びかけたと言う。
しかし実際の事を云えば、この火事の時に下履きを履いていなかった為に… と言う事は当時の大手の新聞では一切触れられていない。実際に白木屋火災で羞恥心が原因で多くの死んだ女性と言う証拠は何もないのですが、本来はこんなことが書けなかった状況と判断するべきだと思います。
しかし、当時の三流のゴシップ新聞が面白半分に「死因は…」と書いた物が定説として残ってしまったようなのですが、これがやはり実態だったのかも知れません。
実はそれ以前から日本女性のズロース着用は、関東大震災の後にも叫ばれていたそうであり、昭和9年5月7日の朝日新聞には「日本婦人にズロース無く門戸開放にすぎる」と言う意見が社説欄に掲載されており、一般への普及はまだまだ遅れていた。
着物にズロースをはく様になったのは、「もんぺ」着用が強制された第二次世界大戦中からである。
戦後、綿の「メリヤス」製のズロースが最高級品として日本国中を席巻し、スタンダードな下着として国民に普及した。ズロース以外のデザインが無かった頃は年代を問わず女児用や幼児用でも見られたが、現在では婦人用のみで、一部の中高年の世代が着用しているかどうか定かではない。